メルマガバックナンバー

新たな高齢者医療制度に向けての取り組み(2010年11月9日)

日本国内に住む75歳以上の後期高齢者全員と

前期高齢者(65歳~74歳)で障害のある者を対象とする

他の健康保険とは独立した制度です。

現在、この後期高齢者医療制度を廃止し、

新しい高齢者医療制度の導入が目指されています。

10月23日の朝日新聞の記事によると、

後期高齢者医療制度を廃止した後の新制度で、

2025年度(団塊の世代がすべて75歳以上となる時期)の

保険料の試算が明らかにされました。

試算の結果は以下のようになっています。

(ただ、これはあくまで平成25年4月を目途に新制度の施行を

目指しているものであり、導入が決定されたわけではありません)

75歳以上の方の保険料…32,000円増加

健保組合に加入する方の保険料…94,000円増加(※)

協会けんぽに加入する方の保険料…72,000円増加(※)

国民健康保険組合に加入する方の保険料…39,000円増加

(※本人と企業の負担合計です)

保険料の増加を見てみると現役世代の方が多くなっています。

これは、高齢者の保険料の増加を抑えるために

現役世代の負担を増やしたからです。

現在の後期高齢者医療制度は、

75歳以上だけを対象にした別制度なので、

このまま高齢化が進行し、医療費が増えていくと

高齢者の負担がどんどん増えてしまいます。

新制度では、後期高齢者医療制度に加入している方を

国民健康保険の被保険者や現役世代の扶養家族にすることで

75歳以上の高齢者の保険料の増加を抑えるようになっています。

その分、現役世代の負担が増えるようになっており、

また、企業は従業員の健康保険料を半額負担しているため、

保険料の増加が企業経営の圧迫にもつながりかねません。

新制度では、75歳以上への公費負担を

現在の47%から50%に引き上げて

健保組合等の負担増抑制を図っていますが、

上記の通り、現役世代の負担増は避けられません。

今後、高齢者の割合が増えていく中で、医療費が増加し、

保険料負担の増加は避けられませんが、

新制度ではその負担の比重が現役世代に偏っていることが

問題視されており、増加していく保険料を社会全体で

どうやって受け止めていくかが今後の課題になるでしょう。

労働時間はどこまでなのか?(2010年10月29日)

一般的に労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれ、

労務を提供している時間をいいます。

よくある質問なのですが、

仕事の前後の時間、例えば仕事前の着替えや、

始業前の簡単な準備や掃除、終業後の後片付けは

労働時間なのでしょうか?

労働時間には次のような判断基準があります。

朝の掃除、準備

始業前に簡単な机の雑巾がけをしたり、お湯を沸かしたり

することは昔からどこの会社にもあることだと思います。

この場合、始業前の掃除やお湯を沸かしたりすることが

命じられていたり、当番制によって事実上強制になっている場合、

黙示の業務命令があるとみなされた場合は労働時間となります。

社員が職場の仲間のために、自主的に掃除などをしている場合は

本人の自発的な行動とみなされ、労働時間にはなりません。

作業準備時間、後片付けの時間

通常の業務に付随する作業であれば、労働時間となります。

例えば、デパートなどで開店と同時に、全員が職場について

お客様を迎えるための開店準備作業や、

閉店後、翌日の仕入れを決めるために後片付けを兼ねて

売上と在庫を計算したりすること、

製造工場などにおいて翌日の始業と同時に作業を

開始するために、清掃をしたり、原材料の準備をすることなどは

労働時間とみなされるでしょう。

ただ、この場合も任意の業務を労働者が自発的に行う場合は

労働時間にはなりません。

更衣時間

労働者は、作業に適した服装で就労すべきであり、

更衣時間は、原則労働者の負担であるという考え方によれば

労働時間とはされませんが、

判例を見てみると、更衣時間については原則として

労働時間に含めないとする判例と

(日野自動車工業事件(最高裁一小:S59.10))

労働時間とする判例

(三菱重工業事件(最高裁一小:H12.3))

があるように、判例でも結論が分かれています。

事業所内において更衣を行うことを使用者から

義務づけられているとされた場合には、

使用者の指揮命令下に置かれたものとみなされ、労働時間とされます。

始業前の朝礼の時間

始業前の朝礼の時間に関しても、使用者の指揮命令によるか否かで

判断されることになります。

強制参加の朝礼、または強制ではないが、朝礼への参加状況が

人事考課に含まれたりする場合は労働時間と判断されるでしょう。

また、朝礼で点呼をとったり、当日の仕事の流れを説明するような

場合も、労働者としては参加せざるを得ず、労働時間となるでしょう。

以上のような基準をまとめると、準備作業や後片付けを

労働時間とするかどうかについては、

使用者に義務づけられたもの、または現実に不可欠なものの場合は、

使用者の指揮命令下に置かれ、業務性を有しているとされ、

労働時間になります。

常識的に考えれば、仕事が始められる状態で始業時間を迎え、

終業時刻になってから後片付けを始めるものだと思います。

しかし、そのための準備時間や後片付けの時間が労働時間に

該当した場合、給料の支払いが必要になってしまいますので、

労働時間を管理する際には、「世間一般の常識」だけではなく、 このような「法的根拠」があることに気をつけて下さい。

最低賃金制度とは(2010年10月15日)

最低賃金制度とは、法律により賃金額の最低限値を定めた制度です。

最低賃金は賃金の実態調査結果等を基に、

毎年10月頃に引き上げられています。

最新情報は最低賃金に関する特設サイトをご参照ください。

http://pc.saiteichingin.info/index.html

最低賃金はパート・アルバイトも含めすべての

労働者に適用されます。(一部特例を除きます)

たとえ労使の合意があっても、最低賃金額より

低い賃金での契約は、無効になります。

最低賃金未満の賃金しか支払われていない場合には、

使用者は差額を支払わなくてはなりません。

また、使用者は労働者への最低賃金の周知義務もあります。

最低賃金には、「地域別最低賃金」と、

「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。

「地域別最低賃金」は、都道府県ごとに、

「特定(産業別)最低賃金」は、特定の産業について

地域別最低賃金より高い水準を定めることが

必要な場合に設定されています。

両方の最低賃金が適用される場合は、高い方の

最低賃金額以上の支払いが必要です。

また、派遣労働者には、「派遣先」の最低賃金が適用されます。

最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、

罰則が定められています。

(50万円以下の罰金。特定(産業別)最低賃金は30万円以下の罰金。)

最低賃金の対象になるのは基本給や諸手当など、

毎月支払われる基本的な賃金ですが、

精皆勤手当や通勤手当、家族手当は最低賃金の

対象になりません。残業代や臨時の手当、

ボーナスなども含まれません。

ちなみに東京都の最低賃金は、

平成22年10月24日より「821円」になります。

もう時給820円のアルバイトは雇えなくなりますね。

中小企業子育て支援助成金について(2010年10月6日)

「中小企業子育て支援助成金」とは、

一定の要件を備えた育児休業を実施する

中小企業事業主に対して、初めて育児休業取得者が出た場合に

支給される助成金です。

「初めて育児休業が出た場合」とは、

平成18年4月1日以後に、会社として初めて育児休業を取得した者が

出た場合です。

以下の場合は対象になりませんので、注意が必要です。

  1. 平成18年3月31日以前に、
    一度でも育児休業を取得させた実績がある場合。
  • 平成18年4月1日以後に、初めて育児休業を取得させた社員が職場復帰しなかった等の理由で支給対象にならなかった場合、もしくは要件を満たしていても申請期限を過ぎてしまった場合。

また、平成23年度までの時限措置になっており、

平成24年3月31日までに申請を行う必要があります。

申請には、6ヵ月以上の育児休業と

職場復帰後1年間(職場復帰が平成22年5月1日以前の場合は6ヵ月)

の就業実績が問われますので、

これから申請する場合は、現在育児休業中の社員が、

6ヵ月以上の育児休業を終えて、

平成23年3月30日までに職場復帰した場合に対象となります。

支給額は、1人目の対象者が出た場合には「100万円」、

2人目から5人目までの対象者が出た場合には「80万円」です。

(予算の状況により、変更や打ち切りになる可能性もあります。)

支給額の大きい助成金ですから、該当する可能性のある事業主様が

いらっしゃいましたら、ぜひご連絡をいただければと思います。

対象となる事業主

(以下の全ての要件を満たすことが必要です)

  1. 雇用保険の適用事業主
  • 常時雇用する従業員数が100人以下であること
  • 支給申請前に一般事業主行動計画を策定し、その旨を都道府県労働局長に届け出ていること。(平成21年4月1日以後、行動計画を策定、変更する場合は行動計画を公表し、かつ、従業員に周知していること) 
  • 労働協約又は就業規則に育児休業について規定していること。
    (平成22年6月30日以後に支給申請を行う場合は、支給申請前に、改正育児・介護休業法に対応した育児休業について、労働協約又は就業規則に規定していること。)
  • 対象従業員が育児休業を平成22年6月30日以後に開始した場合、以下の項目を育児休業取扱通知書などで通知していること。
  • 育児休業申出を受けた旨
  • 育児休業開始予定日及び育児休業終了予定日
  • 育児休業申出を拒む場合には、その旨及びその理由

対象となる育児休業取得者

(以下の全ての要件を満たすことが必要です)

  1. 支給申請に係る子の出生の日まで、雇用保険の被保険者として1年以上継続雇用されていること。
  • 平成18年4月1日以後、1歳までの子を養育するため、6ヵ月以上当該子に係る育児休業を取得したこと。
    (産後休業の終了後、引き続き育児休業をした場合は、産後休業を含め6ヵ月以上)
  • 育児休業終了日の翌日から起算して、1年以上雇用保険の被保険者として継続して雇用されたこと。
    (育児休業終了日が平成22年4月30日以前である場合は6ヵ月以上。)

申請期間は、

育児休業終了日(子の1歳の誕生日の前日が限度)の翌日から起算して、

1年を経過した日の翌日から起算して3ヵ月以内になります。

申請の際には以下の書類が必要になります。

(ケースによっては追加書類が必要になります)

  • 労働協約または就業規則(育児休業の規定が確認できる部分)
  • 対象従業員の育児休業申出書
  • 育児休業取扱通知書など、対象従業員に対しての通知文書
  • 母子健康手帳の子の出生を証明できる部分
  • タイムカード、出勤簿、賃金台帳など

(平成22年3月31日以前に対象となる従業員が出ている場合は、

育児休業だけでなく、短時間勤務を利用した従業員も対象になる

経過措置も設けられています。)

助成金の申請は、書類をしっかり揃えて申請したつもりでも

いざ役所に提出してみると、色々細かいことを追及されたり、

追加書類を求められることも珍しくありません。

また、過去に労働保険料の滞納や助成金の不正受給があった場合や、

法令遵守がされていない場合は助成金は支給されないため、

注意が必要です。

助成金の申請は、支給要件が細かく手間はかかりますが、

金額の大きなものもありますので、要件に当てはまりそうであれば

積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。

迷い続ける40代(2010年9月24日)

昨日、美容院に行ってきました。

https://ameblo.jp/nagasawayuki/entry-10722597294.html

自分の顔が、大きな鏡に映されるのを見るのは、

かなりつらいものがあります。

やっぱり衰えは隠せないです。

特に男性の目はシビアだなと思うことが、最近よくあります。

私が

「この人、10歳ぐらい若く見えるな?キレイだな」

と思って、ネットにあるその人の写真を見せて

「この人、いくつに見える?」と、まわりの男性に聞いても

「45歳ですか?」などと、ズバリ言い当てられてしまいます。

「どう見ても10歳ぐらい若く見えない?」と聞いても

「きれいにしてるとは思いますけど…やっぱりそれなりに、年に見えますよね」

うーん。

「若く見られたい」はもちろんありますが、

ムリしすぎるのもおかしいような気がします。

それよりも「年齢にふさわしい輝き」を狙った方が

いいのかな~などと、思ったりもします。

まわりの人を見ていて、輝いている人って

「今まで、一生懸命頑張って生きてきた人」

「今、何かに頑張っている人」ですね。

笑顔とか、目の輝きとか、ちょっとした瞬間にそれを感じます。

数日前まで夏の暑さだったのに、急に寒くなり秋になったことに気付きました。

こんな時、時の過ぎる早さを感じて、ぞっとするのですが…(笑)

お肌の手入れって、今やっておかないと○年後が…というように

私達の自分磨きも、今頑張ったことが、何年か後に違いとなって現れますね。

(ちなみに、お肌の手入れは全く興味ありませんし、とても強い肌です)

「努力は決してウソはつかない」

私が、いつも自分に言い聞かせている言葉です。

努力した人の10年後と、好きなことや楽しいことばかりしてきた人の

10年後が同じはずないって。

(オトコは平気でウソをつくけど、努力はウソをつかない。 

いや…最近のオトコは、ウソさえつく勇気さえない臆病者ばかり… 笑)

女性として、あと何年こんなちゃらちゃらしていていいのか、

このメルマガの内容でいいのか(笑)、考えてしまいますが、

私の周りにはステキな40代がたくさんいます。

それは、男性女性に関わらずです。

みんな、すごく頑張っていて輝いている。

そういう人達を見ていると、まだまだ大丈夫かな?

と少し元気が出たりするのです。

宿日直勤務の許可は簡単に受けられる?(2010年9月13日)

前回は、管理監督者について書かせていただきましたが、

管理監督者の他にも労働時間、休憩及び休日の適用が除外される

「断続的労働」の一つである「宿日直」について

書かせていただきます。

「宿日直」とは、使用者の命令によって一定の場所に拘束され、

緊急電話の受理、外来者の対応、

盗難の予防などの特殊業務に従事する者で、

夜間にわたり宿泊を要するものを「宿直」といい、

勤務内容は宿直と同一で、その時間帯が主として

昼間であるものを「日直」といいます。

宿日直勤務を行うには、

「所轄労働基準監督署長の許可」が必要になります。

その際の許可条件は以下の通りになっています。

  • 原則として、通常の労働は許可せず、定時的巡視、緊急の文書または電話の収受、
    非常事態発生の準備等を目的とするもの
  • 宿直、日直とも相当の手当を支給していること
    (1回の宿日直手当の最低額は、宿日直につくことの予定されている同種の労働者に対して支払われる1日平均賃金額の3分の1)
  • 原則として、勤務回数は日直については月1回、宿直については週1回を基準とすること
  • 宿直については、相当の睡眠設備を備えていること

このように、宿日直勤務とは労働の密度や態様が

普通の労働とは異なりますので、

普通の労働と一律に規制することが適当ではないとされています。

そのため、宿日直勤務に関しては1日8時間、週40時間という

法定労働時間に関わらず、労働者を使用することができます。

また、労働基準法は宿日直勤務の許可を受けた労働者について、

「労働時間、休憩及び休日に関する規定は、適用しない」としています。

使用者からしてみれば、2割5分増以上の賃金を支払い、

深夜勤務として扱っていた時間が、

宿日直勤務の許可を受けることができれば、

その時間の賃金の支払いは平均賃金の3分の1で済むようになります。

しかし、労働者側にとってはそれまで深夜労働として扱われていたものを

何でもかんでも宿日直勤務扱いにされてしまっては困ってしまいますので、

監督署の許可には細かな条件が設定されているようです。

以前、この申請を行おうとしたことがありました。

許可を申請しようとしたお客様の業種は旅館業、

もう少し詳しく説明しますと、ラブホテルのフロントです。

深夜に宿泊客が来ることはほとんどなく、

来客があった時以外、従業員は奥の部屋で寝ているということでしたので、

宿直にあたるのではと思い、申請を行おうとしたのです。

許可申請書自体は簡単な書式だったので、

許可も簡単に下りるのかと思っていましたが、

監督署に電話で業種、勤務態様を説明し、

許可されそうかどうかを尋ねてみると

「それは許可されませんね。」とのお返事でした。

監督署によれば、このケースでは、ほとんどの時間寝ているとしても、

従業員は常にお客様が来る時に備えて緊張を強いられており、

通常の労働時間と変わらないと見なされるため、

宿日直の許可はされないとのことでした。

このことから、宿日直の基準は一般的な認識よりも

厳しいことが分かりました。

もう一つ、宿直の導入を検討していた葬祭業についても尋ねてみました。

深夜に病院から電話があれば遺体を引き取りに病院へ行く、

というもので、平均すると月10件程度の電話を受けるそうです。

この勤務態様に関しては「許可される可能性はある」とのお返事で、

従業員の宿直回数や宿直部屋などを勘案して判断するとのことでした。

今後の参考のために、許可申請をするときの添付書類は何が必要なのかを

お聞きしたところ、

  • 勤務の実態が分かる日報
    (業務の内容が宿日直勤務にふさわしいかどうかを判断するため)
  • 賃金台帳
    (最低でも1日の平均賃金の3分の1が支払われているかどうかを確認するため)
  • 睡眠設備がある部屋の見取り図
  • その他、状況に応じて監督署が必要と認めるもの

以上の書類を提出後、現地調査が行われ、可否が決められるとのことでした。

加えて、宿日直の許可が厳しくなってきているということでしたので、

実際に許可を申請する際には、

きちんと実態を証明できる書類をそろえなければなりませんし、

現地調査にも立ち会わなくてはいけませんから、

多くの手間と時間を要することを認識しておかなければいけませんね。

管理監督者と残業代について(2010年9月7日)

労働基準法で、監督もしくは管理の地位にある者、

または機密の事務を取り扱う者(管理監督者)には

時間外労働手当(深夜業除く)、

休日手当の支払いが不要とされています。

では、管理監督者とは、どのような労働者を指すのでしょうか?

この解釈を誤って、管理監督者と認められない労働者を

管理監督者としてしまったり、

もしくは会社に都合のよい解釈で、

いわゆる「名ばかり管理職」として労働者を使用していると、

それまでの残業代を、2年間遡って支払わなければならなくなる

ケースもあり、注意をしなければなりません。

原則として、法定外の労働時間に対して割増賃金を払うことは、

全ての労働者に共通する基本原則であり、

企業が任命する職制上の役付者であれば誰でも管理監督者として

例外的な取り扱いが認められるわけではありません。

管理監督者であるか否かを判断する時は、以下の点に留意して下さい。

1.職務内容

 職制上の役付者のうち、経営者と一体的な立場にあり、

労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて

活動せざるを得ないような、重要な職務内容を有していなければ

管理監督者とは認められません。

例えば、取締役に選任されていたとしても、役員会には招かれず、

役員報酬も受けていなかった場合などは、

管理監督者としては認められない可能性が高いでしょう。

2.責任・権限

 例えば、社内において「部長」「課長」といった肩書きがあっても、

自らの裁量で行使できる権限が少なく、

多くの事項について上司に決裁を仰ぐ必要があったり、

上司の命令を部下に伝達するにすぎないような従業員は、

管理監督者とは認められません。

3.勤務態様

 出勤、退勤の管理を受けずに、

自分の裁量で勤務時間を決定できるような

立場にある者に限って、管理監督者として認められます。

例えば、出退勤についてタイムカードに記録が求められ、

遅刻・早退などにより減給される労働者は、自己の勤務時間について

裁量を有しているとは言えず、使用者の管理下にあると考えられ、

管理監督者とは認められません。

(健康障害防止や、深夜業に対する割増賃金の支払いの観点から

労働時間の把握や管理を受けている場合を除きます。)

4.賃金

 毎月の給与や、ボーナスの支給率、その他の待遇等について、

一般労働者と比べて相応の待遇がされていなければ

管理監督者とは認められません。

役職手当等の優遇措置が、実際の労働時間数を勘案した場合の

割増賃金と比べて十分ではない場合なども、

管理監督者とは認められない要素になります。

お客様からも、会社内で管理職としての地位にある労働者を

「管理監督者」として運用していいのか?

という質問を受けることがありますが、

管理監督者は、社内の肩書きや職位ではなく、

その労働者の立場や権限を踏まえて、実態で判断しなければ

なりませんので、簡単に答えられる質問ではありません。

法で定める管理監督者とは、世間一般の認識よりかなり狭く、

労働者を管理監督者として運用する際には、

慎重に検討しなければならないのです。

社労士らしい社労士(2010年9月3日)

先日の飲み会で、ある社労士さんに

「あなたの仕事はなんですか?と考えた時に

コンサルタントとか…今時の感じではなくて、

本当に『社労士らしい社労士』だと思って、

それで長沢さんに興味がありました。

本をだしたり雑誌やメディアに出たりしてますが、

僕はそんな長沢さんの姿は、一部の姿でしかなく

本来の姿ではないですよね。

それより、顧問先の仕事を長く地道にやっている方が

すごいと思いました」

と言われて、すごくうれしく思いました。

私の本当の姿、目指している姿を理解してくれていたんだな…って。

私は、社労士として特徴がないかもしれません。

何が得意かと言われれば、

昔は「助成金」、今は「労使トラブル」系でしょうか?

でも、普通に顧問先があって、手続きをして給与計算をして…

それがメインなんですよね。

そんな自分が、とてもかっこ悪い気がしていました。

ただ、そんな顧問先としての長い付き合いが

本来の「社労士」の姿であり、一番会社や事業主と

どっぷり付き合えるんじゃないかなって思いました。

今は、とにかく情報が氾濫しすぎです。

「こうしなくてはいけない」

「こうすれば仕事が獲得できる」

たくさんありますね。全てがよく聞こえてしまいますよね。

この私でさえ、気持ちが揺れ動くぐらいですから。

でも、情報の取捨選択する力も必要な時代です。

「今時のマーケティング」に走りすぎるのもどうかな?

と感じてしまいます。

私は「コンサルタント」と呼ばれるより

「社労士」と呼ばれたい。

地味な昔からいるような「社労士」でいきたいです。

あなたは何の仕事ですか?

「社労士です」

ベタベタの社労士、それが一番かっこいい。

私の目指す生き方かな?

死ぬまで「社労士」…そんな感じでいきたいです。

会社が行う健康診断の時間、費用等の取り扱いは?(2010年8月27日)

事業者には、使用する労働者の健康を確保するため、

以下の一定の健康診断を行う義務があります。

また、労働者にも健康診断を受ける義務があります。

健康診断の対象となる労働者は正社員だけではなく、

週30時間以上使用されるパート・アルバイトも対象になっています。

また、週20時間以上働く労働者に対しても健康診断を行うことが

望ましいとされています。

1.雇い入れ時の健康診断

 事業者は対象労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、

医師による健康診断を行わなければなりません。

健康診断には検査項目が定められており、

原則として、検査項目の省略は認められていません。

ただし、医師による健康診断を受けた後、

3ヵ月を経過しない者を雇い入れる場合、

その者が健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、

その項目についての健康診断を行わなくてもよいこととされています。

2.定期健康診断

 事業者は、対象労働者に対して、1年以内ごとに1回、

医師による定期健康診断を行わなければなりません。

これも検査項目が定められていますが、

年齢など厚生労働大臣の定める基準に基づき、

医師が必要でないと認める項目は、省略することができます。

3.特定業務従事者の健康診断

 深夜業や坑内業務など、一定の有害な業務に従事する労働者に対しては、

当該業務への配置替えの際及び6月以内ごとに1回

(胸部エックス線検査及びかくたん検査は、1年以内ごとに1回)、

定期健康診断の検査項目について

医師による健康診断を行わなければなりません。

健康診断の費用に関しては、事業者に義務が課されている以上、

事業主が負担すべきものであると解されています。

賃金の支払いについては通達で、

一般健康診断は業務遂行との関連において行われるものではないが、

労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件で

あることを考えると、その受診に要した時間の賃金を

事業者が払うことが望ましい、とされています。

つまり、労働者が健康診断を受けた場合は、

所定労働時間かどうかに関わらず、

その時間の賃金は払う方が望ましいとされています。

あくまで払うことが「望ましい」ですから、

賃金支払いは義務ではありません。

ただし、特定業務従事者の健康診断は、

業務との関連性を有しているため、

所定労働時間内に行われるのが原則であり、

当該健康診断が時間外に行われた場合には

割増賃金を支払わなければならないと解されています。

その他のケースとして、労働者が事業者が指定した病院等での健康診断を

希望せず、自分で健康診断を受診することは認められています。

その場合、労働者に診断結果を証明する書面を提出させれば問題はなく、

健康診断を受ける時間を、労働時間とする必要もありません。

一番問題になるのが、労働者が会社の指示に従わずに

健康診断を受けない場合です。

法律では、事業者が健康診断を実施しない場合、

50万円以下の罰金が定められており、

これを放っておくと会社が罰則の対象になってしまうのです。

(健康診断を受けない労働者に対しての罰則は定められていません。)

このようなケースを回避するためには、就業規則などの社内ルールで

健康診断の受診義務や、健康診断を受けない労働者に対する処分を

規程するようにしましょう。

あっせん状況の処理状況について(2010年8月19日)

現在では、労使間で何かトラブルが起これば、

労働者に有利な傾向にあり、

労使トラブルには敏感にならなければいけない時代です。

従業員とのトラブルが起きないようにするのはもちろんですが、

どんなに注意をしても人を雇って会社を経営する以上、

労使間でトラブルが起きる可能性はどんな会社にもあります。

もし、トラブルが起こってしまった時に大切なのは、

問題をどのようにして解決に導いていくかです。

もちろん、話し合いで解決するのに越したことはありませんが、

現実的には話し合いだけでは折り合いがつかず、

金銭による対応・解決が挙げられます。

ここでは、労働政策研究・研修機構(JILPT)

個別紛争解決促進法に基づくあっせん事案の処理状況を分析し、

まとめた研究報告書の内容を紹介します。

この報告書は、2008年度に4つの都道府県労働局で取り扱った

1,144件のあっせん事案をサンプルとし、

正社員・非正規・派遣など就労形態別に、

合意成立の比率・解決金額等のデータを示しています。

まず、あっせん内容で多かったのは次の3類型です。

  1. 雇用終了など・・・66.1%
  2. いじめ・嫌がらせ・・・22.7%
  3. 労働条件引き下げ・・・11.2%

このうち、1と2について見てみると、

1、雇用終了など

雇用終了の形態は解雇(普通、整理、懲戒)、

雇い止め、退職勧奨、採用内定取消などです。

雇用終了の原因は、経営上の理由が28.8%、

態度22.1%の2つが突出しています。

規模別に見ると100人未満の企業が61.2%を占めており、

法的な検討をせずに解雇などの決断を下し、

紛争になったケースが多いのかも知れません。

もちろん会社側にも言い分はあるでしょうが、

「経営が苦しいから」「上司に対する態度が悪いから」といって

簡単に解雇にすれば紛争に発展する可能性は高くなります。

この場合、紛争調整委員会があっせんを開始しても、

半分近くは「当事者が不参加で打ち切り」になっています。

つまり、あっせんに至った段階で労使間の感情は

相当にこじれていることが伺えます。

合意が成立した233件については、解決金額を調査したところ、

4分の1が10万円台に集中しています。

裁判まで至った場合を考えると、

たとえ和解が成立しても

これより高い金額での解決が予想されますし、

多くの時間も要します。

対して、あっせんに要する期間はほぼ半数が1ヵ月以内、

9割近くが2ヵ月以内となっており、金銭的にも時間的にも

節約・短縮できる可能性が高いようです。

2、いじめ・嫌がらせ

いじめ等の加害者は、上司が44.4%、先輩・上司が27.1%、

会長・社長等が17.9%の順になっています。

被害者は、女性、非正規労働者、

障害者などが上位を占めています。

いじめ事案では、大多数が最初に上司・会社に相談したものの、

まともに取り合ってもらえず、

あっせんを申請したというケースが多いようです。

報告書によると、暴力を加える、罵声を浴びせる、

仕事を与えないといったよくあるパターンのほか、

客観的にはいじめと思えないようなささいな行為を

理由とするあっせん申請も多いそうです。

あっせんの結果は、当事者の不参加が36.9%、

合意成立が30.8%になっています。

解決にこぎつけたケースの合意金額は、

雇用終了のケースと同じく10万円台が最も多く、

全体の27.5%を占めました。

以下、20万円台20.0%、30万円台15.0%という順になっています。

また、あっせんに要した期間は86.5%が

2ヵ月以内であり、早期の問題解決に結びついています。

「誰かに話を聞いてもらいたかった」というような

ささいなケースがあることも要因の一つですが、

この場合でも裁判になった時に比べれば、

より短い期間で、より低い金額で

問題を解決できる可能性が高いと言えるでしょう。

顧問先の社長様から労使トラブルの相談を受けることはありますが、

その中には、

「なんでそんなことで時間とお金を使わなければならないんだ・・・」

と社長が思わず言いたくなるようなささいなことを

従業員が問題にしてくるケースもあります。

このようなトラブルをなくすための、

絶対的な対策はありませんが、

何気ない時に一声かけるなどの

日頃のちょっとしたコミュニケーションを

円滑にすることで社内の雰囲気も良くなり、

紛争防止につながることもあるでしょう。

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