【労働法超入門】記録の保存期間等
2020.10.17 【労働法超入門】 改正労基法では、賃金請求権のほか、記録の保存期間と付加金の請求期間も見直しています。
記録の保存は、たとえば、賃金台帳、労働者名簿、タイムカードなどが対象です。改正前は保存期間3年でしたが、5年に延長されました。ただし、当面の経過措置として3年に読み替えられるので、実務的な影響は大きくありません。
「保存の起算点」は原則として「記録の完結の日」ですが、今回改正により、「賃金の支払期日が記録の完結より遅いときは、支払期日を起算日とする」というルールが追加されたので、注意が必要です。
付加金とは、裁判所が、労働者の請求に基づき、賃金の未払金のほか、これと同一額の付加金を命じることができる仕組みです。その請求期間も、改正前の2年から5年に延長されています(ただし、当面の経過措置として3年に読み替えられます)。
改正法は令和2年4月1日の施行ですが、たとえば、令和2年の3月から賃金の未払が続いていたとしましょう。この場合、時効等の規定はどのように適用されるのでしょうか。
改正法の附則では、「施行前に支払期日が到来した場合の消滅時効期間は、従前の例による」と規定しています。令和2年2月分の賃金を3月に支払う義務があったとすれば、この3月支払分の賃金の時効は2年です。3月分の賃金を4月(施行日後)に支払う義務があったとすれば、施行日前の3月分の賃金であっても、5年(読替えにより3年)の時効が適用されるという結論になります。
最後に、賃金の時効の起算点も確認しておきましょう。改正前の労基法では、この点について明文規定が置かれていませんでした。今回改正では、「これを行使できる時」が起点であることを明文化しています。行使できる時とは、具体的にいうと、賃金の支払日という解釈になります。
今年の4月より改正された労基法の一つ、「記録の保存期間」が見直された。
従業員の賃金台帳や労働者名簿、タイムカード等の保存期間が「3年間」から「5年間」に延長されたのだが、全てデータ化して保存しているような事業所にとっては、それ程大きな問題はないと思われる。
ただ、全ての事業所が電子データで保存しているわけはなく、未だに多くの事業所では「紙ベース」で管理しているのが現実だ。
それも数人程度の従業員数であればまだしも、何百人ともなると、1カ月分のタイムカードですらかなりの収納スペースを使用する事になる。
更に2年分追加となる「5年間」になったら、もはや紙ベースでの保管は困難となり、ペーパーレス化は必須となるであろう。
(もっともそれ程従業員数の多いような企業は、とっくにデータ化が進んでいるであろうが。)
ペーパーレス化の波はこういう側面にも表れてきているのを感じる改正であった。
しばらくは経過措置として「3年間」のままとの事なので、まだまだデータ化が進んでいないようであれば、これを準備期間と捉え、導入を検討するのも良いかと思う。
また、未払賃金の請求期間も「2年間」から「5年間」へ延長された。
こちらの改正の方が、事業所側にとっては重要かもしれない。
よく聞かれる「残業代未払い」などは事業所側もある程度は把握している事であり、請求された場合の事も多少は想定しているであろうが、そうではない「うっかり未払い」も実は多く存在している。
例えば自社での給与計算において、残業単価はきちんと法定通り計算されているであろうか。
残業時間を法定内・法定外・深夜・休日深夜等、きちんとカウントされているか。
社会保険料や雇用保険料に間違いはないか。
100%自信のある所はそれ程多くないように思う。
(それは実際給与計算業務のご依頼をいただき、以前の賃金台帳を拝見させてもらうと、申し訳ないがよくわかる・・・。)
微々たる金額であれば、気付いた時点での返金や追加支給も可能ではあるが、割と大きな金額で、更に5年分ともなると、「ついうっかり」では済まないような額になる事もあり得る。
こちらも当面は「3年間」という経過措置付きだが、これを機に色々見直すのもいいかもしれない。